2020年8月11日火曜日

JICAと社労士(ついでに厚労省)の闇(4)

 (前回、前々回、前々前回からの続きです。ラスト。)

結局、日本の社労士制度をインドネシアに導入しようとするのは悪いとは言いません。しかし、嘘をついてまでとまでは言いませんが、誤解を招くようなプロモーションするのはどうかと思います。JICAは、ODAを使って特定業種(今回は社労士)のプロモーションに加担しているとしか思えません。これは、ODAに群がる日本企業に金をばらまいていた昔の構造と全く同じに見えます。そして、社労士プロモーションの後ろには所管の厚労省が控えているわけです。

また、小野氏の発言のみを今回は抽出しましたが、好意的に解釈しても社労士制度の説明が不適切です。「日本の弁護士は裁判業務ばかりで交渉や紛争予防はしない」とか、実績があるのかどうか不明の社労士保佐人(裁判での意見陳述)を一般的であるかのように述べて「弁護士は、労働事件はわからない」とウソをついています(言い切ってはいないが、そう聞こえます。で、これはウソでしょう)。このウソのために、「労働紛争解決制度の紹介」と銘打っているセミナーであるにもかかわらず労働審判をあえて説明していないといった困った事態になっています。もし、この社労士が本当にそう思っているならばそれはそれでどうかと思います。

このようなセミナーは、日本を信頼して聞いてくれている他国(今回はインドネシア)の聴衆にたいして不誠実です。事実の検証が難しい外国で、自分たちのプロモーションのために著しく客観性に欠ける説明をするのは、ほとんど詐欺です。「社労士のプロモーション」と正面から言えばまだ良いものを、「日本の労働紛争解決制度」の説明と言って、社労士会ADRがあたかも労働局のあっせんや裁判等と同じだけの地位のある制度であるかのように説明し、弁護士の役割を貶める説明を行ってよいはずがありません。

JICAの支援は要請主義ですので、相手国から要請を出すように「営業」するのはやむを得ないことかもしれませんが、事実を曲げてまで要請を取り付けようとするのは、まともなやり方だとは思えません。社労士制度が本当にインドネシアに必要だと思うなら、正面から説明すべきで、ちょいちょい誤魔化しているところをみれば、本当は必要もない制度をODAを使って押し売りしていると言われてもしょうがない。そのことを、当の社労士自身も認識している証しだと思います。そして、社労士会も、そこまでしてインドネシアに社労士制度をつくって何がしたいのかとも思います。

*後日の検証のためにも、このYouTube消さないよう関係者にはお願いします。https://www.youtube.com/watch?v=ZoAAlI37Yng

JICAと社労士(ついでに厚労省)の闇(3)

 (前回、前々回からの続きです)

さらに小野氏は、次のようにも述べます。

「社労士は、民間セクター。資格試験にパスしたら誰でもできる。一般的には自分で事務所を持っている。そのスタイルは、たぶんインドネシアで言えば弁護士と同じです。」

「労働者と企業が直接労使交渉する際、話し合いの場合に、交渉の代理人としては、社労士は入れない。ただ、その間にたって、話し合いの中で専門知識を生かして調整することは可能です。労働者側がADR、あっせんを申し立てた場合に、労働者側の代理人として社労士がconciliatorとして立つことができるし、使用者側代理人として社労士がconciliatoとして立つことはできる。というのは、弁護士法が先にできてて、社労士法が後にできたので、範囲は限定的ということですが、ADRに進んだ場合はあっせんできる。」

ILOがいうソーシャルダイアログを促進する意味で社労士を間に入れることを調整することはよくやっている。法律問題を解決する代理人としてではなくて。弁護士が化学薬品とすれば、社労士はジャムウ、普段からじっくり服用して健康な体を作る役割です。」

小野氏は、ことごとく社労士を弁護士と対比されますが、弁護士と比較して社労士がよりよい解決ができるというのはかなり無理がある立論のような気がします。ていうか、弁護士資格で社労士登録できるんですけど?

JICAと社労士(ついでに厚労省)の闇(2)

(前回からの続きです) 

小野氏のその他の発言ですが、気になった点を列挙してみます。

「(社労士は)社内規則を作ったり、契約書を確かな法律に従ったもので作ったりする手助けをする。大きな紛争になる前に労使対話を促進して未然防止する。社労士とブンガチャラ(弁護士)の違いは、弁護士は裁判上紛争が起こってしまってから解決することが多いが、社労士は未然に防止する。」

「労使紛争の数に比して労働基準監督官の数は不足している。そこに社労士が補完的に役割を担える。」

「弁護士が、裁判から後のステージを業務としているので、社労士が裁判前のステージで紛争予防の仕事を主な業務にしている。話し合いでなるべくものごとを解決するのが主業務です。ぼくは大阪労働局のあっせん委員をしているが、大阪労働局で話している中で、弁護士と社労士の違いを話したことがある。弁護士はあっせんを打ち切る確率が高いというのが労働局の職員の印象らしい。なぜかというと、あっせんで無理して解決しなくても裁判にもっていって解決したらいいじゃないかと思いがちだ。社労士は解決するのが仕事だと思っているので、解決率は高いと言われている。」

これらも、一般論としては妥当ではなく、かなり一方的な見解であるように思います。そもそも、あっせんそのものの解決率が低いですし、かなり利用されていると思われる労働審判についても一切述べられていません。

JICAと社労士(ついでに厚労省)の闇(1)

私は、このブログで社会派ネタを書きませんが、今回は珍しく書きます。

私自身、JICAの法整備支援専門家として5年8か月モンゴルに派遣されて、様々思うところがありました。正直、JICAのODAで食っている人が数多いのも知っています。そういう人たちを非難する気持ちは全くないのですが、今回は、無理繰りさが際立っていると思った話題をあえて。

JICAがインドネシアに社会保険労務士(社労士)制度を導入するプロジェクトを実施しています。このプロジェクトに関係して、WEBセミナーが行われ、YouTubeで公開されていますが、その内容があまりに歪んでいるように思います。https://www.youtube.com/watch?v=ZoAAlI37Yng 

たとえば、このセミナー中で特に気になったのは次のような点です。

特定社会保険労務士の小野佳彦氏は、社労士は、普段から労使対話を促進する役割を担っていると述べています。そして、社労士は労使の間で調整、政府のあっせん機関での労働者・使用者の代理をやることを強調します。

しかし、小野氏は次のようなことも併せて述べています。「ただ、社労士は裁判にも一部出るようになっている。弁護士の中には、労働問題に深い知識を持っている人もいるけれど、そういう人は限られていて、一般的な民事・刑事は慣れていても、労働・社会保障には慣れていなくて対応しきれないので、社労士が一緒に出て専門的な意見を述べる役割を担う。これが社労士である。」

2015年法改正による保佐人業務のことを述べているのだと思いますが、一般論として、弁護士と対比して、社労士のほうがより専門知識があるということがあるでしょうか?

年齢を意識する

 高校の同窓会の案内が届いた。卒業後30年以上経ってはじめての同窓会である。同級生は皆50歳を超えている。生憎、所用で参加できないのだが、いまだに14歳のときから考えていることはほとんどおんなじで年齢を意識することなどほとんどないぼくも、ああ、おじいさんになったのかとしみじみする...