2014年8月25日月曜日

最近のモンゴル訴訟事情①

先日、標記の題名で講演する機会がありました。
時期を失すると無意味な内容にもなりかねないので、旬のうちに公開します。
2014年の上半期(1月から7月)で、特徴的だと思われる事件(民事) について、現職の裁判官・弁護士らにたずねました。客観的なデータではないのですが、ウランバートルで第一線で活躍する法曹の現在の問題意識が分かると思います。


最近目立つのは、1 不動産関係事件の増加と、2 保険関係事件の増加の傾向だといいます。いずれも、経済発展に伴う法律関係の複雑化のあらわれであると考えられます。


1 不動産関係事件について、具体的にはどのような紛争が増えているのでしょうか?
1-1 マンション面積のトラブル
近年マンション価格は高騰していますが、マンション面積の紛争が増加しているようです。
一般に、モンゴルでは、1平方メートルあたりの価格を基準にして、これに面積をかけて、マンション価格を決めています。購入後、表示されていた面積より狭いということで、マンション購入者が業者を訴える事案が最近非常に増えているのです。


特に新築マンションについては、①建設前から販売している、②面積に基づいて価格が決定されている、③面積の積算基準が明確でない、といった事情から、面積に関する紛争が絶えないとのことです。面積は、測量の方法によって面積は全く変わります。壁の内側からはかるのか、真ん中かはかるのか、外側からはかるのかによって大きく変化しますし、ベランダなどは含むのかといった問題もあります。公正取引委員会が一応、基準となる測定方法を定めているのですが、この面積表示基準については、現在行政訴訟で有効性を争われており、基準として確定していません。したがって、面積基準に従っていないということで訴訟提起しても、必ずしも勝てるわけではありません。また、この基準に従うという契約がない場合、面積表示基準に従った判断はされない可能性もあります。さらに、建物種類によっては、面積基準が適用されるとしても、どの基準(基準は複数ある)が適用されるのか、という問題があります。


結局、契約書にどのように書かれていたかによることになります。
契約書に記載がない場合には、購入価格が相場に沿っているかなど公平の観点から判断するしかなく、大多数の裁判では、業者に不利な判決を出すと不動産市場が低迷するといった政策的考慮もされているのではないかとのことです。
契約書の重要性がわかる話です。

2014年8月22日金曜日

国会議員団のモンゴル訪問

夏季休暇にあわせてか、いくつかの国会議員団がモンゴルを訪問しています。
(* たとえば、江田五月議員 http://www.eda-jp.com)


関連して次のような報道もなされています。
モンゴルを訪れている日本の超党派の国会議員団は20日、モンゴルのボルド外相と会談し、北朝鮮による拉致問題の解決に向けて協力を求めました。
日本とモンゴルの友好議員連盟などの国会議員13人は、両国の文化交流の取り決めが締結されてことしで40年になるのに合わせてモンゴルを訪問していて、一行は20日、ボルド外相と会談しました。会談では、先月、両国の間で貿易や投資の自由化を進めるEPA=経済連携協定について大筋で合意したことに触れ、両国が経済的な結び付きを強めていくことに向けて意見が交わされました。また、日本側の議員団は、北朝鮮による拉致問題について、北朝鮮と国交があるモンゴルに問題の解決に向けて引き続き協力してもらうよう求め、ボルド外相は「やれることはしっかりとやっていく」と述べて、協力する考えを示したということです。モンゴルはたびたび、日本と北朝鮮の政府間協議の会場となってきたほか、拉致被害者の横田めぐみさんの両親が、めぐみさんが産んだ孫のウンギョンさんとことし3月に対面した際も面会の場所になるなど、日朝を巡る舞台となっていて、先月、安倍総理大臣も拉致問題の解決に向けてエルベグドルジ大統領に協力を求めています。」(* NHKニュースhttp://www3.nhk.or.jp/news/html/20140821/t10013958731000.html)


これにあわせてだと思いますが、実は、安倍首相の母である安部洋子氏がモンゴルを訪問しており、現地でも報道されています。公式には書道展に参加するためとされていますが、一部では対北朝鮮との秘密交渉をしているとも言われています。
(* 週刊ポスト2014年8月15・22日号参照)
現地の報道によれば、昨日は、アルタンホヤグ首相と面会し、日本との協力・友好関係について話をしたとのことです。

首都の交通規制

モンゴルでは9月1日から新学期が始まります。

8月末の今の時期は、地方の実家に帰っていた学生が首都に戻ってくる時期であり、また、新学期の準備のため人々が忙しく動き出す時期でもあります。

この時期の首都の交通の混雑を解消する目的で、今日(8月22日)から2つの交通規制が始まっています。

1つは、車両のナンバー規制です。現在でも、各曜日に走れる車両ナンバーが決まっており、たとえば、うちの自動車は末尾4のナンバーですが、毎週木曜日には首都を走行できない決まりとなっています。今日から8月31日まではさらに規制が厳しくなります。すなわち、その日に走行できるのは奇数、偶数のいずれかのナンバーの車両だけとなります。私の場合、個人で持っている自動車も、仕事で与えられている自動車もいずれも末尾が偶数ですので、生活にとても差し支えます。



もう1つ、今日から8月31日までの間、新バスルートの試行が始まりました。首都の中心を東西に走る平和通りなどで路線が混在し、円滑な走行に支障が生じていることや、複数の路線が重複して非効率であることなどを理由に路線を整理しています。さらに、乗車料金500MNTは、これまでは1回乗車の都度支払う必要がありましたが、路線変更に伴い、当日であれば何度乗車しても500MNTとなっています。


2014年8月12日火曜日

モンゴル国民の生活

国家統計局から7月の社会経済指標が発表されました。


それによれば、2014年第2四半期のモンゴルの平均世帯収入は、101万3856MNT。昨年の同時期のデータが84万504MNTでしたから、20パーセント近く増加したことになります。


平均世帯支出は101万138MNTでわずかながら世帯収入は黒字になっています(昨年同時期は87万1547MNTで若干の赤字)。
支出の内訳は、食料費が21万7584MNT、その他のサービス費が68万1135MNT、交通費が7万4548MNT、通信費が3万5600MNTとなっています。



これは全国平均ですから、ウランバートルの平均収入・支出はこの1.5倍以上に増加すると思います。ウランバートルでは平均世帯収入は日本円で10万円程度にまでなっているかもしれません。
ただし、注意点として、最近急激なMNT安が進んでいることから、対日本円・USDでいえば、昨年と同水準の収支であるといえるでしょう。
とはいえ、人件費・材料費など急激に上昇していますので、5年前のような金銭感覚でモンゴルで事業をはじめたりすると計算が狂うことになります。




2014年8月11日月曜日

石炭汚職

モンゴルは、アルタンホヤグ首相がらみのスキャンダルでもちきりです。

写真:タバントロゴイ炭鉱前の道路の検問所

7月29日、アルタンホヤグ首相の上級顧問であるガンスフ氏が、「石炭」供給プログラムに関連する汚職で逮捕・勾留されました。容疑は、国民に安定して安価で石炭供給を行う政府事業にからんだ汚職。


同氏は親族などが経営する会社を通じてこのプログラムの実施業務を受託し、実際の購入価格の2.5倍程度の過大な利益を乗せた価格で石炭を国民に販売し、さらに8億MNT以上の赤字が生じたとして政府から追加給付15億MNTの支払いを受けました。原価との差額を横領したものと考えられており、実際に横領された金額は明らかになっていませんが、2億円程度になるような報道もあります。
写真:オユトロゴイ鉱山の施設

同氏の逮捕後の7月31日、同氏の勾留場所に、アルタンホヤグ首相がひそかに訪問し同氏と面会したことが明らかになりました。事件と無関係であれば強引に面会する必要は内にもかかわらずこのタイミングで面会するというのは、首相も事件に関係しているのではないかと疑われています。拘留場を管理する法務省のテムジン法務大臣が面会を実現させたとも言われています。


モンゴルでは汚職のうわさは常にありますし、実際に賄賂を要求されたり賄賂を支払った例も見聞きしていますが、仮に今回の事件に首相や法務大臣も加担しているとなると波紋は大きいでしょう。




2014年8月8日金曜日

土地の配布がはじまっています

モンゴルでは1991年の民主化以降、さまざまな国有財産の私有化を進めました。しかし土地所有権については私有化は進みませんでした。これに対し世界銀行、アジア開発銀行などが土地私有化を求めました。その結果、1992年のモンゴル憲法で土地私有が明文化され、1994年には土地法が制定されました。土地法は2002年に改正され、土地配布の手続法である「モンゴル国民への土地所有化に関する法律」も制定され、土地の配布が始まりました。


モンゴル国民全員に一定の面積(場所により面積は異なる)の土地が配布されることになっており、現在も土地配布が行われています。
ウランバートルの土地は希望者に比べて配布される場所が非常に少ないことから、競争率が高いのですが、いくつかの地区では、インターネットで希望の土地について申し込みできるようになっています。8月1日から始まった土地配布についての応募状況は次のとおりです。


(8月3日22時現在)       (募集区画数)  (応募者)
バヤンズルフ区                 909区画       17974人
ソンギノハイハン区             4189区画            16112人
ハンオール区                  869区画            12610人
バガノール区                 7504区画             2844人
バガハンガイ区                1483区画        1431人


(8月4日11時現在)       (募集区画数)  (応募者)
バヤンズルフ区                 909区画       27036人
ソンギノハイハン区             4189区画            24819人
ハンオール区                  869区画            19397人
バガノール区                 7504区画             4372人
バガハンガイ区               1483区画         2181人


(8月5日12時現在)       (募集区画数)  (応募者)
バヤンズルフ区                 909区画       34541人
ソンギノハイハン区             4189区画            32225人
ハンオール区                  869区画            24607人
バガノール区                 7504区画             5960人
バガハンガイ区               1483区画        2729人


(8月6日9時現在)       (募集区画数)  (応募者)
バヤンズルフ区                 909区画       42539人
ソンギノハイハン区             4189区画            40960人
ハンオール区                  869区画            30980人
バガノール区                 7504区画             8010人
バガハンガイ区               1483区画        3408人


ウランバートル在住の人の話ではあまり良い土地ではないとのことですが、それにしても、都心部はすごい競争率ですね。

2014年8月7日木曜日

鉱業の発展と家庭内暴力の増加

久しぶりの更新です。

モンゴルでもDV(ドメスティック・バイオレンス)の問題は深刻です。
実際に裁判所での事件を見た感覚や、現地での裁判官や弁護士など関係者の話を総合すると、日本よりもDVに該当するような事案は多いと思います。もちろんそのための対策もある程度はなされており、女性保護のためのNGOも複数あり、避難のためのシェルターなども設けらています。
モンゴルでは、現在、酒を飲んで暴力を振るうというのがDVの典型といえます。日本では、経済的DV(例:生活費を渡さない)や心理的DV(例:行動監視)など、DVの概念は広がっています。これら身体的DV以外の概念を取り込むなら、モンゴルでのDV発生件数はさらに増大すると思います。
写真:タバントロゴイ炭鉱近くのよく整備された道路。
2014年7月にタバントロゴイとオオユトロゴイを訪問しました。


ところで、鉱山業の発展がDVの増加を招いているという記事がモンゴルの新聞に出ていました。
詳細は書かれていませんが、オーストラリアの大学教員の意見として、鉱山業の発展は、家庭や地域に悪影響を及ぼし、DVを増加させるとのことです。
確かに、鉱山労働者には比較的貧しい人が就くことが多く、また、その際には、地元を離れて単身鉱山現場に出稼ぎに行くことが多いと思います。その結果、仕送りをやめるなどして家庭を顧みなくなったり、新しい家庭を作ったりといったトラブルも現実に増加していることは、裁判所での事件を見ていても分かります。当然、これらのトラブルに起因するDVも増加していると思います。
モンゴルでは鉱山業に国家経済は依存しており、また、人口維持も国の重要な課題ですから、この問題提起は重要だと思いました。


年齢を意識する

 高校の同窓会の案内が届いた。卒業後30年以上経ってはじめての同窓会である。同級生は皆50歳を超えている。生憎、所用で参加できないのだが、いまだに14歳のときから考えていることはほとんどおんなじで年齢を意識することなどほとんどないぼくも、ああ、おじいさんになったのかとしみじみする...