労働契約における期間の定めというのは、重要な問題である。
一般的に、日本でもモンゴルでも期間の定めのある労働契約よりも、期間の定めのない労働契約のほうが労働者に有利だ。これは、期間の定めがない場合には、いつでも労働者は辞職できる反面、使用者は解雇が容易に認められないことが主な理由だ。
さて、モンゴル労働法には、正規雇用の労働者は期間の定めがないものとすると規定している。季節労働者、産休育休などの代替労働者、試用期間といった特に期間の定めをすることが合理的な場合を除いては、期間を定めた雇用契約が締結できないようにも思われる。
これは、使用者にとっては結構めんどうな規定だ。
アルバイトとかパートタイムとか言われる、時間単位で給与計算して雇用する労働者を使いたい場合というのは時々出てくる。そんなときに、期間の定めができないとなると、これは非常に困ってしまう。
一応、労働法にも、労働者と合意すれば正規雇用であっても期間を定められるとあるのだが、この合意というのがくせ者で、裁判所でもなかなか認められない。労働者が自分に不利益な期間の定めを受け入れるというのはきわめて例外的な場合に限られるとされているからだ。
アルバイト、パートタイム労働者について、モンゴルでは事実上合法的に雇用できないのではないか?
実を言うと、最近まで僕もそう考えていた。
しかし、最近は雇用できるという扱いに法律実務上でもなってきているようだ。
どういうことかというと2つくらいの説があるらしい。
1つは、そもそも「正規雇用の労働者」にアルバイトやパートタイマーはあたらないという説である。
もう1つは、「正規雇用の労働者」にあたるが、合意を比較的緩やかに考えるという説である。
前者は、モンゴル労働法があえてアルバイトやパートタイマーについて記載しなかったのはこれらを正規労働者にすべきと考えていたからと思われること、後者は、合意を厳格に考える最高裁の解釈などと異なる理解であることから、それぞれ批判は可能である。
しかし、これらの労働者を雇用する実際の必要性が強いことはすでに見たとおりであるし、期間の定めを設けてもよいと国立大の教官も述べるようになっている事実からは、現状はモンゴルではアルバイトやパートタイマーを期間を定めて雇用しても、問題にならなくなっているのではないかと思われる。
小さいことだけれど、実際に現地で事業を行う人にとっては結構重要な変化だといえるだろう。
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